『天使』の撮影準備には、ひとつの大きな課題がありました。深田さん演じる天使のCG・合成カットのプランニングです。テーマは「飛ぶ」と「羽」。
「飛ぶ」に関しては、主に二つの方法を考えました。ひとつは、特注のシーソーです。鉄製のシーソーに自転車のサドルをつけた専用の機材をオーダーメイドし、深田さんに実際に乗ってもらいながら、改良を重ねていきました。もうひとつはワイヤーによる吊り撮影です。天使の全身を捉えるショットは、合成用のグリーンバックスタジオで、ワイヤーを使って撮影をする方針にしました。
「羽」に関しては、大きい羽はフルCGにして、通常天使にくっついている小さな羽は、握りこぶし大の羽毛の固まりような、もこもこした羽を実際に作りました。内部にモーターを仕込み、ラジコンのコントローラーでうにうにと動く仕掛けになっており、監督も満足の出来になりました。ギリギリまで脚本を詰めた上での撮影準備だったこともあり、通常の映画の準備である、ロケハン・衣裳あわせなどをこなしながら、同時進行でCG・合成カットの準備を進めざるをえず、なかなかハードな日々が続きました。